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最後の一色
第21章 最終章:運命の導き
春、4月。
美大受験生向けの予備校での講師の仕事を始めた涼輔は、
同時に月に一度、アトリエで子供の絵画教室を始めた。
教える、というよりは絵を通じて自由に感性豊かに育ってもらいたいという願いを込めて。
教室を開くことは美紗緒と2人で決めた。
仕事を増やして収入を得るためではない。
絵を描くのが好きな子供たちに真剣に向き合いたいというのがその理由だ。
そして子供に恵まれなかった美紗緒が、子どものために何かをしてあげたい、という
思いを叶えるためでもある。
月に一度、7人ほどの近所の子供がアトリエに通ってくる。
元気な声を張り上げながら、庭の花々の間を駆け抜けてくる。
午後の陽射しの中、庭に出て花を描く子もいれば、
中でおもちゃの車とにらめっこしながら描く子もいる。
好きなように絵を描かせる。
涼輔は一人一人の個性を大事に、
その個性を絵に表せるように手助けをするだけでいる。
そして子供たちの楽しみは、絵を描いた後のおやつの時間。
美紗緒が得意の手作りお菓子を焼き、子どもたちと一緒に楽しむ。