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最後の一色
第7章 6日目
・・どうして最後にするんですか?か・・
暗闇にそよぐ草木の音を聞きながら涼輔は、
不思議そうな目を向けながらモデルが放った言葉を思いだしていた。
ここまで、画家として細々とでもやってこれて、
それはそれで満足していたが、
やはり恋人との別れがその自己満足に終止符を打った。
ここから先、もしもまた愛する人が現れたら今度こそ、この手で守りたい・・
以前から美大時代の友人にもちかけられていた講師の仕事を引き受けることを決めた。
美大を目指すためのいわゆる予備校で講師をしないかと何度となく誘われていたが、
画家一本でやっていきたいという気持ちが返事を拒んでいた。
でも今となっては、もっと早くに決断していればよかったのかもしれないと
後悔の色をにじませている。だから・・
ここらで区切りをつけよう。
次の絵画展に出品するのを最後に、名刺の肩書を変えようと心に決めた。
・・もし賞をとれてもとれなくても、この作品は必ず最高の出来になるはずだ・・
窓から見えていたかすれた月は、いつのまにか雲が取れはっきりと姿を現した。
こんなふうに心の中からも霞が消えたのは、あの人のおかげかもしれない・・
涼輔はそっとカーテンを閉めた。