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最後の一色
第7章 6日目
「僕は・・」
画家はやっと口を開く。
「僕は画家として一区切りつけるために今まで描かなかった
裸婦画で絵画展に出品しようと思ったんです」
涼輔は筆をおき、壁際に立てかけてあるキャンバスの中から、
1枚2枚と取り出し、美紗緒の前にかざした。
ワンピース姿で微笑む女性。
片方の乳房だけさらし、片側だけ布で覆われた半裸の女性。
そのどちらも清楚な雰囲気を感じられる絵だと美紗緒の眼には映った。
「おとなしいでしょう?この雰囲気。それが僕の持ち味でもあるんですが・・
なにかこう・・少し違う雰囲気のものが描きたいと思ったんです。
そしてこれを絵画展に出品する最後にしようと決めたんです」
「どうして最後にするんですか?」
「さあ・・どうしてでしょうね・・」
曖昧に答えながら絵を元の場所へと戻し、涼輔はキャンバスの前に戻った。
そのあと、画家もモデルも、口を開くことなく描き描かれた。
夏の昼下がりは静かに過ぎていく。
息づかいさえも聞こえない。
それは、
力いっぱい命を振り絞り泣き続ける蝉のせいだった。