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最後の一色
第2章 男が求めるのは
新宿駅南口近くの細い路地に、古めかしいレンガ造りの建物があり、
その1階にこれまた古めかしい喫茶店がある。
その重々しいドアを男が開け中に入ると、
クラッシック音楽が優雅な音色を聞かせていた。
店員に案内される前に男は一番奥の席へと向かっていき、
後ろからついてくる美紗緒を振り返ると、どうぞ、と手を伸ばした。
アンティーク調の椅子に腰を下ろすと、天井からぶら下がるシャンデリアを見上げ
そこそこ大きな音量で流れる音楽に耳を傾けた。
「ここはね、クラッシック音楽専門の喫茶店なんです。
これ、レコードなんですよ」
嬉しそうに男は話す。
その屈託のない微笑みに、美紗緒は不安を解くことにした。
「お好きなんですか?クラッシック」
少しのんびりとした口調だが、自分を拒んだりしていない。
それがわかり、男はさらに明るい声をあげた。
「ええ、大好きです。優雅で気品あふれて。
今どきの若者が聞くような音楽はどうも苦手です。心が落ち着かなくていけない」
「あら、あなただってお若いのに」
「はは!そうなんですけどね、40超えるとなんだか急に
若者との壁が高くなった気がして」
男は恥ずかしそうに髪をかきむしる。
美紗緒は小刻みに笑った。