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最後の一色
第2章 男が求めるのは
小休止の様な沈黙に合わせるかのように店員が注文を取りに来た。
「僕はキリマンジャロを。あなたは?」
どうやら男は豆を選ぶほどコーヒーにも精通しているようだ。
同じもので、そう美紗緒が小さな声を出すと
店員はうなずき戻っていった。
「コーヒーもお詳しいんですね」
「いえ、それほどでも。
まぁどちらかというと酸味の強いものが好みですね。あなたも?」
尋ねられて、美紗緒は首を振りながら弾むように笑った。
「よくわからないからあなたと同じものにしただけなんです。
でもコーヒーは好きですよ」
流れる音楽と同じように、自然と会話が進んでいく。
この男に、
田原涼輔という男に、
警戒するような要素はほとんど消えていた。
初対面の、それもふいに声をかけてきた男と2人で相対しているのに、
不思議だ・・