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最後の一色
第8章 10日目

だからといって、女の体に男が触れることは決してなかった。

手がずれていたり髪が乱れていても、
涼輔が手を伸ばし直してやることはしなかった。

誠実な態度ではあるが美紗緒の中で、物足りなさが転がりながら大きさを変えていく。

どうして・・私に触れないのだろう・・
ポーズが違っていたら直してくれればいいのに・・
髪が顔にかかっていたらはらってくれればいいのに。
そのくらい不快になんか感じない。
画家がモデルを直しだけなんだから。

2日前、美紗緒は涼輔に笑いながら言った。

直接直してくれていいんですよって。
腕を掴むくらい、髪に触れるくらい、別に気になりませんから。

そう言っても男の手が
この肌に、髪に、
触れることはなかった。



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