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タンバリンでできたオーロラ
第15章 触手伯爵と美貌の四銃士

「なっ馬鹿なっ!」

 扉の向こうから差し込むいくつものカンテラの光。

「銃士隊だ! カンターロ=ド=ギュステーヌ、都下における婦女失踪について尋問がある、神妙に協力し、同行したまえ!」

 清烈な女の声が響き渡った。先ほどまで広間を覆っていた淫堕な闇を切り裂くようだった。

 光を背にして立つのは青いコートの燕尾からスラリと伸びた長い脚を軍装の白いキュロットとロングソックスに包み、銀色の短髪に鶏冠帽、知性的な、しかし今は怒りを湛えて舞台の上の狂態を射抜くように睨みつける瞳。

 その人物が誰か伯爵はもちろん、その場にいた誰もが知っていた。誰かが思わずその名を口にする。

「ナルシャ=ブランシェ……」

 ナルシャ=ブランシェ。
 王都守護軍である銃士隊の副官。疾風のサーベル使い。

 ナルシャが高々と片手に掲げているのは枢機卿の執行令に違いない。気づいた客たちが一斉にうろたえる。

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