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タンバリンでできたオーロラ
第15章 触手伯爵と美貌の四銃士

「ヒッヒィィィー!」

「じゅっ銃士隊の手入れだっ」

「逃げろっ」

 といっても、まともな出口にはナルシャが立ちはだかっている。

 それでも素性を知られたくない客たちはナルシャの横をなんとかすり抜けることに一縷の望みを抱いて我先に押し寄せてきた。

 しかし先頭を切って駆け抜けようとした客の一人が鈍い音と共にその動きを止めた。どさり、とそのまま床に崩れ落ちる。

「往生際が悪いぜ……逃げようとする奴ぁこのカーラ様が相手だ」

 勇ましい台詞とともにナルシャの後ろからぬっと姿を現したのは逞しい巨躯、赤毛の大女だった。ナルシャとは色違いの深紅の帽子とコート、コートの下からのぞくベストは乳房のふくらみではちきれんばかりだ。ベストとキュロットの間には臍をのぞかせている。

 カーラ=ボニファス。

 男顔負けの銃士隊随一の膂力の持ち主。銃士隊の象徴であるマスケット銃を銃身を掴んで肩からひっさげ、撃つという本来の用途で使う気はさらさらなさそうだ。

「……全員ブッ飛ばしてやるから覚悟しな!」

 ずい、とカーラが身を乗り出すと客の群れは総崩れとなった。雪崩を打って逆方向へと走り出す。

 しかしそもそも逃げ場はないのだ転ぶ者、押し倒される者、誰かが蹴倒してしまった燭台から燃え移った炎がカーテンに移る。

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