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タンバリンでできたオーロラ
第27章 ヌーディスト課長

「……聞いてる? 部下(ツカサゲ)君?」

 っと、課長が眉を吊り上げてこちらを睨んでいた。
 せっかくの美人が台無しですよ、と。

 誰のせいでということは棚上げして、俺は答えた。

「ええ、すいません。おっしゃる通り、私の見積もりが間違っていました」

「問題はね、見積もりが間違っていたことじゃないのよ、これが経理のほうから回って来たってことなの。どうして私が目も通していない書類があっちに行ったりしてるわけ?」

「いや、それは……」

「しかも、私の承認のサインまで!」

「先方がですね、急いでいらして……」

「急いでいらしたから、何? それで私を通さない理由になるとでも?」

 彼女が怒って立ち上がる。
 揺れる、揺れるボイン。そして目の前に露わになる黒い茂み。

 俺って今怒られてるよな?
 なんかご褒美貰ってるような気になるんだが。

「部下君、これね、横領だとか背信を疑われても仕方がない事よ?」

 やっぱり怒られてるな。
 弁明をしよう。

「聞いて下さい……その日課長は沖縄に出張されてましたよね?」

 俺は見積書の日付を目で指し示す。

「……そうよ。でも、メールで送ってくれれば承認ぐらい」

「私もそうしようとしましたが……」

「あ……」

 彼女にも俺の言わんとすることはわかったようだ。
 あの日、台風の影響で沖縄一体の携帯は電波状態が悪く、何度送信しても届かなかったのだ。

 夜には復旧したようだったが、それでは当然間に合わない。
 何度か試した後、俺は自己判断で課長のサインを真似て、経理に回してしまったのだ。

「計算のミスは俺の責任です。申し訳ありません」

「……事後報告しなかったのは?」

「それも、他の案件で立て込んでいたせいで忘れてしまっていました。申し訳ありません」


 潔く謝る。
 裸の女に向かってあれこれ言い訳を並べるぐらいなら、気持ち良く頭を下げたい。

「……わかったわ」

 課長もそれ以上無駄に追求を続けることはなかった。
 サッパリしてるのは身に着けているものだけじゃないのが彼女の良い所だ。

「でも、これもう、客先に届いてしまっているのよ。受注したから経理から問い合わせがあったの。どうするの……この価格でやれるの?」
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