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タンバリンでできたオーロラ
第27章 ヌーディスト課長
俺は課長といっしょにすぐさま営業車に飛び乗った。
脱いでいた上着をひっかけて俺。
助手席の彼女はバッグひとつだけの姿だ(バッグはシャネルかなんかのブランド品で、なかなか裸に映えるデザインだった)。
そう言えば彼女と出先に同行となるのは初めてだ。
取引先に謝罪に行くために……というか、あらゆる意味で裸の女を車に乗せたのは初めてだった。世が世ならかなりヤバイ感じだ。
相手先に到着し、来訪を告げると、すぐに専務室に通された。
そこで俺は思わずのけぞってしまった。
専務は全裸で待ち構えていた。
いや、いやいやいや。
違う。
待ち構えてはいたのだろう。
だが、そのために全裸になったわけではない、と思う。
おそらく、これはカミングアウトしたのだ。
別に俺たちが来るとは関係なしに、最近……確か専務に最後にお会いしたのは半月前で、そのときはフツーに服を着ていたから、この二週間ばかりの間にカミングアウトしたのだ。
確かに、思い返してみれば兆候はあった。
フツーの勤め人ならもうとっくに定年退職している年齢でありながら、妙に体つきが良く、普段から鍛えているのだという話を聞かせて貰った事がある。
水泳だとか、ジョギングだとか、トライアスロンにも参加していたそうだ。
スポーツマンなんですねーと思っていたが……。
備えなくてはならないとかナントカおっしゃってらっしゃいましたな、そー言えば。
聞き流していたけど。
つまり、備えていたわけだ。
来たるべきカミングアウトに。
ヌーディじゃない人間にとって本当に理解しがたいことではあるが。
その年で、そうまで努力して、公共の場で裸をさらしたいものなのか。
お風呂に入るときだけではダメなのか。