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今宵ワタシの胸の中で
第1章 卒業の夜に
大学の卒業式、謝恩会、ゼミの打ち上げ…

仁美と孝仁はお互いの友達と大いに盛り上がって、お酒を飲んでいた。

そろそろお開き?という時に仁美の携帯にLINEが届いた。孝仁からだ。

【この後、オレの部屋で飲むぞ】

【了解♪】

二人のアパートは歩いて2分の距離。
仁美は自分の家でシャワーを浴び、部屋着にパーカーを羽織り、冷蔵庫からお酒を持って、孝仁の家に向かう。いつもと同じように…

飲む約束をした時は勝手に玄関を開けて、孝仁の家に入る。

「おう!」

ベッドに寝たまま、片手を挙げて、テレビを見ている孝仁。これもいつもと同じだね。

「飲み物持ってきたけど、飲む?」

仁美は自分で持ってきたチューハイを開けながら、いつもの大きなクッションの上に座った。

「オレ、いいや…」

飲もうと言ったのに、変なの?仁美だけチューハイを飲み始めた。

「今日で卒業だな~。仁美、いつ引っ越すの?」

ベッドに寝る孝仁とクッションに座る仁美の目線はほとんど変わらない。

話かけられて初めて、クッションの位置がベッドのすぐ隣なことに気づいた…今日はなんか近い。

「えっと、今度の水曜かな?孝仁は?」

「オレは日曜。」

今日が金曜だから、明後日か。だから、荷物が少ないんだ…

「仁美…今日、泊まって行けよ。」

いつも泊まる確認なんてしない。だいたい飲んでると泊まってる。それなのに、今日はどうしたんだ?

「今日でこうして過ごすのも最後だな。いろいろありがとう。」

「そうかもね。こちらこそ、いろいろありがとうね!」

仁美と孝仁は顔を見合わせて、二人で笑った。

今日で最後…そう思うと、どこからともなく、相手を想う気持ちが溢れてくる。

恋人はいるけど…スキ。そんな気持ちがあること、お互いわかってた。
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