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今宵ワタシの胸の中で
第2章 BARで飲み過ぎた夜に
私、寝ちゃったんだ…
あれ?背中に毛布が掛けてある。

「石田様、大丈夫ですか?」

自分の名前を呼ばれて、夢心地から現実に戻された。

「す、すみません!私、飲み過ぎたみたいで…しかも、寝てしまって。」

恥ずかしくて申し訳なくて、私に話かけてくれている人の顔もまともに見ずに頭を下げて、謝り続けた。

「大丈夫ですよ。閉店近くで石田様しかいませんでしたから…ただ、もう鍵をかけてワタシも帰らなくてはなりません。」

「えっ?!も~、本当ごめんなさい。か、帰ります!!」

慌ててカウンターの椅子から立ち上がろうとした…けど、飲み過ぎた私はまともに立つこともできなかった。

「石田様!大丈夫ですか?」

倒れてかけた私を抱きかかえてくれた人…誰?

私…自分を助けてくれた、優しいこの男の人の名前知らない。

しかも、何回もお店に来てるけど、この人のこと見たことない。

「あ、あの…あなたは?」

力が入らなくて、名前も知らない彼に抱きかかえられたまま、聞かずにはいられなかった。

その優しい眼差しに吸い込まれそう…そして、今にもキスされそうなくらい顔が近づいてくる。

「知りたいですか?」

「は、はぃ。」

返事をした瞬間に彼に唇を奪われた。頭に手を添えられ、キスが深くなる…

不思議…見ず知らずの人にキスされてるのにイヤじゃない。寧ろ、このまま、このキスに溺れたい…

だらんと下に降ろしていた腕を彼の首に廻した。

彼の舌が口の中に入ってきて、私の舌を犯す。

気持ち良くなって、甘い吐息が漏れてしまう…

「石田様、そんなにワタシを夢中にさせないでください。」

えっ?

キスを一度中断して言われた言葉と私に向けられた視線に息が止まりそうになる…

私、どうしたんだろう?飲み過ぎたから?失恋して麻痺してるのかな?

それとも…私…恋に落ちた?

「あなた、誰?」

キスを遮るように両手で男の人の顔を離して、問いかける。

「石田様を想う男ですよ。」

フフっと優しい顔で笑いながら言った後、私のおでこにキスをする。
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