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第35章 祈り②

「なんで、今奴の名前が出てくるのさ?」




　堰を切ったように彼がいた風景や当時好きだった曲が彼の声で頭の中を流れ出すが、同時に疑問も沸いてくる。綾波に史の話をした事はないはずだった。史は高校の時の友人だったが、家に遊びに来たことは無かった。誘った事もあったが、なぜかいつも断られていた。母の菊野は祐樹の話を聞いて大層彼に会いたがっていたのだが。
　
　綾波も当時は既に西本の家を出ていたので、もし史が来たとしても会うことは無かったのだが。

　祐樹もバンドを組んでいる話は綾波にした事はあるが、その頃は詳しい話まではしていなかった。