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らぶあど encore!
第35章 祈り②
デビューしてからの怒濤の日々。色んなことがあった。プロデューサーの志村、他にも音楽業界の沢山の人々と出会い、初めての取材に初めてのラジオにテレビ出演、アマチュアの時とは違うプロの仕事は新鮮で厳しく、時に歯がゆい思いをする事もあったが、納得のいく楽曲が出来上がったときや、クレッシェンドの音楽がファンに届いているのを実感した瞬間――街中でふと自分達の曲が流れ、誰かがそれに気づいて笑顔を浮かべたり、口ずさむのを見たり――そんな日はハードなスケジュールの疲れなど吹っ飛んだものだ――
目の廻るような日々の中で、ふと彼の事が過ると、大切な物を遠い手の届かない場所へ忘れてきたしまっかたの様に落ち着かなくなった。
会わなくなって、連絡さえも取らなくなり、今彼が何処で何をしているのか全くわからない。決して忘れていたわけではない。忘れられる訳がなかった。彼の不思議な歌声が、未だに耳の奥に残っているのだ。