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らぶあど encore!
第36章 目を醒ますBEAT
それに加えて亮介が怪我をしてバンドの活動が危うくなったり、ほなみが救急で運ばれたり、景子の身元詐称が発覚したり――
立て続けに事件ばかりで、ゆっくりと自分の事を考えるなど、出来ない状況だ。
先程の景子の泣きそうな顔が過り、あぐりの唇が歪む。
すると、いつの間にか手に握られていたトレーを奪われて、あぐりの目の前に野村の優しい眼差しがあった。
「泣きたいの?……泣くなら、胸を貸すけど」
彼の問い掛けが心地よく響くと、あぐりの大きな目に涙がじわりと浮かぶが、歯を食いしばって堪えた。
「なっ泣かない!」
「そう……じゃ、背中を擦ってあげる」
「咳止まったし!」
「まあ、いいじゃん」
「何がいいのよっ」
「触らせてよ」
「なっ……」
あぐりが絶句した時、野村に腕を掴まれて引き寄せられた。