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らぶあど encore!
第36章 目を醒ますBEAT
“BEATS稲川孝、喉の難病でミュージシャン生命に危機”
何の事が書いてあるのか、暫く理解できずにあぐりは固まっていたが、ニュースの画像――稲川が武道館のステージでアンプを蹴って高く跳躍した瞬間の写真だ――から目が離せずにいると、ドクドクという音が聴こえてきた。
写真の彼は、素敵なものを見つけた少年のような笑顔だった――あぐりもこの表情を見たのだ。BEATSが初の武道館公演を行った時、あぐりは最前列で彼を見ていたのだから。この写真は、その時の物だ、とあぐりには分かる。
ドクドク……
耳障りな、心を乱すその音が、自分の鼓動だと気付いたあぐりは、スマホを床に投げると自分の身体をきつく抱き締め、呪文の様に呟いた。
「ちがう……違う……ドキドキしてるのは……野村くんと抱き合ってたせい……そうに決まってる――」