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らぶあど encore!
第15章 それぞれの、朝 ②
「――そう?」
野村は悪戯な色をその顔に浮かべ、低く笑う。
あぐりは脱いだ服をかき集め、野村に背を向けた。
「き……着るから、こっち見ないで」
言った側から、羽交い締めにされて耳に囁かれ、あぐりは震えた。
「いいじゃない……
お預け喰らった可哀想な俺に、見せてよ……
あぐりの……」
「も……もう――
バカ――っ!」
あぐりは裏拳で野村の顎をすっ飛ばし、彼は崩れ落ちた。
「あっ……
マズイ!またやっちゃった――!」
あぐりは頭を抱えて叫び、彼の側にしゃがみ、頬を叩いた。
「もう……マジで私ヤバイな……
これって立派なDVよね……はあ……」
野村の睫毛が小さく瞬き、ゆっくりと瞼を開き、薄く笑った。
「ああ、野村君!
貴方こそ病院で診て貰ったほうが――」
あぐりがホッとしてそう言った時、野村は腕を伸ばし彼女を引き寄せた。
「……ちょっと……野村く……」
「愛してるよ……
殴られても……
踏まれても……」
チクリ、と胸の奥が痛んだ。
先程、稲川と重ねて野村を見てしまったのに――
何故、今更彼を想い出してしまうのだろう。
(今、私が好きなのは野村君なのに……)
あぐりは、野村の腕に包まれながら、不可解な自分の心に生まれたさざ波の音を聞いていた。