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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
「ようちゃん、行こうか」
女性が不審な目を向け、男の子の手を引いて行こうとした時、男の子は亮介の手をギュッと握り締め
「だいじょうぶ、だいじょうぶ、痛くない!」
と、呪文を唱える様に言った。
離れて見ていた景子は、その仕草を見て胸の奥を掴まれて涙が滲んだが、亮介がまた大仰な身ぶり手振りでパフォーマンスを始め、ハラハラする。
亮介は男の子にニッコリ笑うと
「ありがとうな~!
ボクのお陰で、お兄ちゃんこ~んなに元気になったよ!」
と叫びながら、スクッと立ち上がり華麗なステップとターンを決めた。
周囲の患者達も注目し、男の子も目を輝かせて小さな手を叩くと、周りからも拍手が起きた。
景子は、他人の振りをしてその場から逃げたくなってしまい頭を抱えて壁に寄り掛かるが、その時バッグを落としてしまい取ろうとして身を屈め、足に痛みが走る。
「痛いっ……」
足の甲を擦りながら顔を上げると、亮介を見ていた男の子が景子の方を見つめていた。
「……っ」
景子は呼吸を止めた。