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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
「お騒がせしました、スイマセン、スイマセーン」
亮介は集まっている人達に頭を下げるが、若い女性がおずおずと近付く。
「あ、あの……
クレッシェンドの……
神田さん……じゃ、ないですか?」
亮介は、人差し指を顔の前に立てて左右に振った。
「ざーんねん!
僕は本人さんじゃありませんよ~!
本物が、こんな所で変なダンスなんかする訳ないでしょ~?」
女性は、訝しげに首を傾げたが、やがて納得した様に頷いた。
「そうですよね!
神田さん、この間のライヴで見ましたけど、物凄くかっこよかったし……
よく見ると、似てないかも~!」
「へっ」
亮介はズリッとずっこけるが、笑顔でへどもどすると、女性も周囲の人だかりも皆パラパラとその場を去り始めた。
「……な、なんか複雑」
苦笑する亮介に、男の子が手を握り上目遣いでニカッと笑う。
「元気だしなよ、お兄ちゃん!
まあまあカッコよかったと思うよ~」
「そ、そう~?
ありがとうな~!
お兄さんは亮介て言うんだけど、君は?」
身を屈め男の子の目を見る亮介に、男の子の付き添いの女性が怪訝な態度をまだ崩さない。
「何なんですか貴方……
洋平は熱が出て具合が悪いんです……
構わないで下さい!
ようちゃん、ようちゃんも知らない人と話したらダメでしょう?」