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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
景子は、あぐりの咳が止まると手を離し、髪を揺らし優雅な仕草で腰掛けた。
あぐりは口を開けたまま、景子を見てしまう。
(――子供が居る母親には、とても見えないわね……)
だが、洋平を腕に抱いた景子の姿には何ら不自然さは見えず、あるべきパズルのピースが合わさる様にしっくりしていた。
あぐりは、テーブルの上の紙ナフキンを指で弄びながら、ほなみの事を思った。
ほなみも、あと数ヵ月で母親になる。
いや、もう既に母親なのだ。
ほなみが、妊娠し祐樹と一緒になるまでの経緯が一言では説明出来ないのと同じで、景子の事情も複雑なのだろう。
何故、あんなにママを恋しがる子と離れ、しかも子が居るのを隠してミュージシャンのマネージャーをしているのか。
母が、氷の如く景子に冷たいのは?
他にも、あぐりの胸に浮かんだ疑問は数えきれない。
「あのさあ……」
あぐりが、意を決して口を開いたその時、スマホの着信が鳴り、景子はあぐりに
「ゴメンなさい、ちょっと待って」
と言うと、電話に出た。