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らぶあど encore!
第16章 不穏な前兆
亮介は、胸苦しい程の愛しさが込み上げて来て、人目も憚らずその場で俯く景子を抱きすくめた。
通りに面したテラス席でのその光景は、通行人や店の中の客達の注目を浴びる。
フラペチーノを飲んでいたあぐりも丁度それを目撃し、危うく吹き出しそうになり噎せた。
野村は目を見開いたが、黙って二人を見守っている。
「り……亮介君……
皆が見て……」
景子は泣きながら周りを気にして小さな声で訴えるが、 亮介は彼女を離さない。
そのか弱い折れそうな肩に何を背負っているのか知りたいと思った。
だが今は、崩れ落ちそうな彼女を抱き締めていたい、という思いだけが亮介を支配していた。
「頼むから……
一人で泣くなよ……」
「――亮介……く」
「一人で泣くな……」
景子は、彼の背中の向こうの空に飛ぶ白い鳩を見つけたが、やがてそれは溢れる涙でぼやけてしまい、いつの間にか飛び立っていた。