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らぶあど encore!
第19章 心~crossroads
「ん―ん―ん――っ」
口を塞ぐその手を噛もうと歯を立てた時、耳元で史の笑い声がした。
「ハハ……
そんなに驚くなって」
「――史っ!」
史に解放された景子は、まだ驚きが収まらない様子で息が荒い。
史は、勝手に冷蔵庫からビールを出して飲み、顔は赤くはないが目が据わっていた。
シンクに転がる空き缶を見て、景子は眉をしかめる。
「……飲み過ぎじゃないの?
それに、来るなら一言メールか電話してよ」
史は、目を見開くと、飲み干した缶を乱暴にシンクに投げ入れた。
派手な音がして、景子はビクリと身体を震わせた。
「俺とお前の仲だろう……?
夫婦みたいな物なんだから、いつ来ても構わないだろ?」
史がにじり寄りながら景子を上から下まで見詰め、唇を舌でぺろりと舐める。
史のその仕草は、悪魔的な美形の彼を更に妖しく綺麗に見せた。
昨日までの景子なら、その顔を見ただけで身も心も蕩けて、彼に
"抱いて"とせがんだだろう。
だが、何故か一晩明けた今日、史の魅惑な眼差しを見ても何も感じない。
景子は、その事に自分でも驚いていた。
(私……何故……?)