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らぶあど encore!
第19章 心~crossroads
しかし、祐樹は人妻とのスキャンダルを起こし世間で騒がれ、一時期はバッシングされた。
だが、潰れるどころかクレッシェンドは益々人気が上昇し、常にヒットチャートに名を連ねるアーティストにのしあがる。
(好き勝手にしているあいつらが成功しているのに、俺は……!)
史はいつしか、かつての仲間達を憎む様になっていた。
これが只の逆恨みなのは史にも分かっている。
だが、ふつふつと沸き上がる負の感情は止められなかった。
自身もバンド結成、解散を繰り返してきたが、今のFUMI BANDはもうすぐ一年。
自分にしては上手くやっている、と史は思っていた。
だが、他のプロを目指すバンドが抱える問題が、FUMI BANDにもある。
やはり、経済的に成り立たない状態が続けば、どんな素晴らしいバンドも存続出来ない。
他のメンバー達も、将来を考え正社員になったりして、バンドに割ける時間がぐんと減った。
史もいざとなれば一人でも音楽は出来ると思っているし、今までそうして来たのだ。
だが、一人では何をやるにも限界がある。
ライヴハウスを借りるにも、チケットノルマを一人でこなすのは至難の技だ。
(やっぱり、金が世の中物を言うんだ……)
常々思っていた史は、店の客が落とした岸和也の名刺を見て思い付いたのだ。
(チャンスがやって来ないなら、こっちから掴みにいってやる……)