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らぶあど encore!
第29章 貴方の側に居たい
「……な……何を言ってるのよ!怪我人が!……貴方はね、先ずはしっかり治してクレッシェンドに一日も早く復帰するって事が一番大事でしょう!」
核心に触れられるのを恐れ、咄嗟に景子は誤魔化すように彼に檄を飛ばした。
卑怯かも知れない。自分の事をギリギリまで隠し通して、側に居たいなど。
やはり今の景子には真っ直ぐな亮介に何もかもを打ち明ける勇気は持てなかった。
嫌われたくない。軽蔑されたくなかった。
いくら優しくて大きな心を持つ彼でも、洋平の実の父親の史に命じられて、バンドを撹乱しようと企んで居た事を知ったら――
それが目的で彼らに近づいた事を知ったら、流石に怒りに震えるのではないだろうか?
亮介に冷たい眼差しを向けられてしまったら――そう思うだけで、景子は身がすくみ、涙ぐみそうになる。
(この期に及んで、よく思われたいだなんて……私はズルい)