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らぶあど encore!
第29章 貴方の側に居たい
「色々大変だけど……頑張ろうね……て、大変にしたのは俺じゃんかっ」
「ふふ……そうね」
ノリ突っ込みする亮介に、景子の緊張はほんの少し解れる。
景子は窓から射し込むオレンジの光に目を細め「こうして亮介君と夕陽を見られるの、あと何回かな……」と呟いた。
正体を知られたら――岸和也の知り合いの娘という嘘がばれてしまったら、彼から引き離される――思いの内が無意識に溢れてしまった。
亮介も赤々とした鮮やかな夕陽を見て感嘆の声を上げ、景子の肩を抱き言った。
「何回どころか、何百も何千も何万もじゃない?」
「そうかな……」
「だってさ――これから先は長いよ――?一年が365日としてさあ……」
亮介は、この先も景子が隣にいる事を疑いもしないような口振りで、時折眉をひそめながら暗算をしていた。
そんな彼の肩に頭をもたせかけ、景子は瞼の裏に焼き付けようとするかの様に今日の夕陽を――彼の横顔を見詰めた。
ただ、こんな優しい時間がずっと続いて欲しい――叶わないのだ、と知りながら、願わずに居られない自分の愚かさにまた泣きたくなった。