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らぶあど encore!
第30章 密約
膝を抱え込み、景子は小刻みに震えて涙を溢す。涙は次から次へと溢れ華奢な手の甲を伝い落ちていった。
身体を弄ばれ抵抗出来なかった悔しさと恐怖と、焦燥感と、自分を鼓舞する勇ましい気持ち――相反する様々な感情が胸の中に渦巻き、景子は乱れる息を整えようと深呼吸した。
(――どうしよう……限りなく勝てる見込みのない勝負を挑んでしまった……でも、あのまま引き下がる訳にはいかなかった……
何とかするのよ景子……私は今、初めて人生を勝ち取りたいと思っている。今までの私は、流されるがまま自分の不遇を嘆いて誰かのせいにして生きていた……
でも今は違う――私は私自身の手で明日を切り開いて行かなくちゃ――)
震えの収まらぬ手を固く握り、景子は強い輝きを放つ瞳を宙に向けた。
この先には何が待ち受けていのか――ひょっとしたら、得るのもは何も無いのかも知れない。そうだとしても、手を伸ばして抗わなくては何も掴めない。
景子はある覚悟を決め、独り頷いた。