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らぶあど encore!
第33章 言葉に出来ない②
あぐりはカナの手を握り――というよりはすがっている様に見えた――景子を見てまた視線を逸らした。
「誰が嘘を付いてるだとか付いてないだとか……そんなの何だって良いわよ……」
「……あぐり」
景子が涙を溜めた瞳で震えながら呟くと、あぐりは悲しげに言う。
「――人間なんて皆嘘つきなんだからさ……ねえ?」
「――っ……あぐり……っ」
「北森さん――!早くしてください!」
切迫した看護師の声に、景子は「はいっ……」と返事をすると、皆に深く頭を下げる。
「私――いかなくちゃ……皆さん……本当にごめんなさ……」
「景子……とにかく行こうぜ……今は洋平の事が大事だ」
史は景子を庇うように肩を支え共に歩き出すが、ふと振り返って訊ねる。
「――ほなみ……の事……どんな経過なのか知らせてくれたら助かる」
「お前に教えてやる義理はない」
「ふん……そう言うと思ったよ……」
きっぱりいう綾波に、史は口を歪めて舌打ちすると景子の細い肩を抱いて背を向ける。
二人が自動ドアの向こうに消えるのを、皆はそれぞれの思いで見詰めていた。