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新月
第3章 美月
嬉しいこと、楽しいこと、悲しいこと、嫌なこと———。
チヨは、自分が経験したことを、たくさん話してきた。
母は嬉しそうに、または、チヨの心が軽くなるように、いつもそばで話を聞いてくれていた。
しかし、今はチヨは一人だ———。
テルがいなくなった悲しみを、一人で抱え込んでいた。
自分の場所は不安定で、今にも崩れそうな崖に支えもなく立っているようなものだ。
美月は、幼い雛鳥をなでるように、
優しく、ゆっくりと背中を撫で続けた。
かかさま、かかさま……。
チヨは背中に暖かい温もりを感じながら、眠りに落ちていった———。