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新月
第5章 透吾
『チヨ、なんでいつもみたいに、とうごちゃんっていわないの?』
ビクッ
透吾の険しい顔と、いつもの優しい声とは違い、攻める口調に
チヨは、驚いて、肩をすぼめた。
『だって、かかさまが、とうごちゃんはおやしきのおこだから、
ちゃんと、とうごさまってよびなさいって……』
透吾に怒られたと思って、チヨは泣きそうだ。
『チヨ、
チヨは僕と友達じゃないの?』
『とうこちゃんは、ともだちだよ!!
とってもとってもだいじだよ!!
……でも、かかさまが………』
チヨは、どうしていいかわからなかった。
透吾も大切だか、かかさまの言うことは守りたい。
どうすれば、透吾はわかってくれるのか…。
幼いチヨには、わからなかった。
…しばらくして、
『……じゃあ、みんながいないところでは、とうごちゃんって呼んでよ。
いないところなら、いいでしょ??』
……いいのかな?
チヨが迷っていると、
『じゃないと、もう、チヨとは遊ばない。』
『えぇ!!
なんでぇ〜?』
とうとう、チヨは泣きだしてしまった。
『やだよ!やだやだ!!
とうごちゃんと遊べないなんてやだ!!』
透吾は、ニコっと笑って、
『じゃあ、約束ね。』
そういって、チヨの涙を拭いてくれた。
そう、昔は無邪気に遊んでいたのだ———。