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ネムリヒメ.
第8章 雨.
「痛めてるの手首だけじゃないよ…彼女、雅とぶつかって思い切り突き飛ばされたみたい…
傷だらけだし、カラダもだいぶ冷えきってた」
「………」
聖が落ち着いた口調で話していくなか、渚はどこか一点を見つめながら耳をかたむける
「それと…泣いてた」
「っ……」
「すごく怖かったと思うよ…あのバカが乱暴にしたから」
雨が激しく窓ガラスを叩きつける
「……それで、お前は!?」
それまで黙って聞いていた渚が口を開く
「ぇ…!? ぁぁ、オレは渚くんと交代」
「は!?」
顔をあげる渚に向かって聖がにっこり笑いながらソファーから立ち上がる
「やだなぁ…葵くんと一緒にしないでよ、
オレは隙あらば襲おうなんて思ってないし…」
「………」
「…カラダだけなんてなんの意味もない………でしょ!?」
ヘラっと笑っていたかと思った聖の栗色の瞳がギラッと妖しく光る
笑顔を消して口元を歪めながら不敵な笑みを浮かべる聖に、渚の背中が一瞬ゾクッと震えた
「…………」
無言のまま鋭い視線を返す渚に聖が再び笑顔を向ける
「やだなぁ、渚くん。ほら、早くいってあげて…ちーちゃんがいま 一番側にいて欲しいのは渚くんだから…」
「そ……」
…渚は部屋から出ていく聖の背中を見送ると、小さく息を吐きながら吸いかけのタバコを灰皿に押し付けた