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ネムリヒメ.
第9章 イチゴ味の夜と….
ピンッ…とライターの蓋を鳴らして、ただタバコの煙を吐き出しているだけなのに、艶やかで、絵になってずっと見ていたくなってしまう
存在自体が毒だ…
なんてガン見していると、アタシの視線に気がついた渚くんが顔をあげた
「んだよ…早くシャワー行け…」
「ぇ…」
「ぇ…じゃねーよ、食事すんだろ…行かないなら犯るぞ」
「………!!」
斜め上から流した目を鋭く光らせた彼の声に、すかさずベッドを抜け出すアタシ
そんなアタシの背中から鼻で笑う彼の声がする
もう‼
ちょっと顔がいいからって、仕草がスマートだからって、タバコが似合うからって、なに言っても許されると思わないでよ…
…ねっ!!
「千隼っ」
「……!?」
呼び止める彼の声に振り返ると間もなく、心のなかで叫びながらせっかく作った膨れっ面が崩壊する
「…なに食べたいのか決めとけよ」
「…っ……!!」
心臓が破られたかと思った
バルコニーから差し込む日の光を浴びながら、壁に寄りかかってタバコを燻らす彼
日に透けた黒髪を掻き上げながら、クールな表情を崩した とろけそうなほど甘い笑顔に瞳を奪われる
ちょっと、ねぇ…
まるで恋人に見せるような笑顔を急に向けないでください
眠れなくてカラダがもたない前に、本当に心臓がもたなくなるから
「……はい」
しかも、面食らって声が上擦ったし…
アタシは赤くなる顔を隠すように急いでバスルームに逃げ込んだ