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ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
「っ…」
彼の問いかけに、なにも返事ができないまま邸が近づく
その距離が縮まるにつれ、晴れていた気持ちが徐々に曇りだして、無言の車内に響くウインカーのカチカチという音も、なんだか心臓の音とシンクロしてだんだん嫌な音に聞こえてきてしまう
「大丈夫? …じゃないか」
すると、隣から優しい声がして黙ったままでいるアタシの膝の上に置かれた手に、彼の手が重ねられた
「………」
それでも尚、黙ったままのアタシに葵くんはなにも言わず、前を向いたまま車を進める
"現実逃避希望って顔に書いてあったよ!? 違う?"
きのう彼から言われた言葉…
自分では吹っ切ったつもりだったのに、逃避していた矛盾だらけの現実がモヤモヤとして胸のなかに蘇る
吐き出せばきっと楽になるかもしれない想いが、なかなか支えて吐き出せない
なんだか胸が苦しくて、言葉にする前に涙が先に出そうな気がして、唇が言葉を紡ぎたがらない
言えない…しかし、
「葵くん…ゴメン」
…そう言っていた
なんで自分が謝っているのかわからないけれど、車内に響いた自分の声は少しだけ震えていて、俯いたままだけど、葵くんが驚いてアタシの方を見たのがわかる
「え…なに!?」
「帰ったらでいいから、ちょっとだけ…」
「…え!?」
「…抱っこして」
「………!!」