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ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
人気のない路地で重ねられる唇
冷たい空気にさらされるなか、触れあった唇だけが熱くなる
街灯に照らし出された彼の眼差しは真っ直ぐで…
こんな時なのに、
アタシの心臓はたった一日で彼に魅せられてしまったせいなのか、大きな振り幅で揺らされる
弱ってる自覚は大有りだったの…でも……
そこに付け込んでるんだって言われても、そんなのどうでもいいって思ってしまうくらい、弱ってたなんて気がつかなかった
「そんなのどうでもいい…」
「……!!」
どうしようもなくズルいアタシは爽やかな香りがする彼の胸に顔を埋めて、ジャケットの内側に滑り込ませた手を背中に回してしがみついていた
「ズルくてもなんでもいいから…もうちょっとだけこうしてて」
「ちーちゃん…」
葵くんが一度腕を緩めてアタシ抱き締め直すと、布の擦れる音のあとに、少し早い彼の鼓動が聞こえてくる
まだ冷える春の夜、風が吹けばカラダが縮こまる
「なかに入ろう…風邪ひいちゃう」
葵くんは震えるアタシを抱き上げると、助手席に乗り込んでドアを閉めた
彼の膝の上に向かい合うように乗せられて、再び抱き締められる
「ね…その "どうでもいい" って言葉、ちーちゃんに返そうかな」
え…!?
「普通とかそうじゃないとか…それこそどうでもよくない!? そんなの誰にも決める権利なんてないって思うけど」
「……!!」
あ……
下から見上げながら優しく髪を撫でる葵くんは、今日もいとも簡単にアタシのモヤモヤをぶち壊そうとする
ねぇ…
切なくて、胸が苦しいよ