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ネムリヒメ.
第15章 イチゴタルト.
下唇を滑る彼の長い指
アタシはただただ深く揺れるその瞳から目が離せないまま、瞬きも、呼吸するコトも、声を出すコトも出来ないでいた
彼の黒髪が流れるようにアタシの額に落ち、吐息がかかって唇がゆっくりと重なる
そっと触れるだけのキス…
「千隼…」
唇を離した彼が甘く掠れた声でアタシの名前を紡ぐ
その響きに、よくわからない感情で胸のなかがいっぱいになって、どうしようもないくらいに胸が締め付けられる
それがなんでなのかわからなくて、戸惑うアタシはそれを誤魔化すかのように口を開いた
「ちょ、ちょっと待って」
「なんだよ…黙れよ」
アタシの制止の声に、再び顔を寄せた渚くんが眉根を寄せる
「なん…で…いるの」
「なんでって…」
「だって…ここ…」
葵くんの部屋…
「………い…」
そう言いかけた所で、渚くんが何かを呟いたコトに気がつく
「え…!?」
思わず耳を疑って目を見開くと、漆黒の瞳が揺れアタシを見つめたまま渚くんの唇がゆっくりと動いた
「眠れない…」
「…………!!」
「お前がいないと……眠れない」