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ネムリヒメ.
第15章  イチゴタルト.



ピリリリリ……


「ん…」


遠くで鳴る携帯電話の電子音で目が覚めた

うっすらと目を開けると、アタシを抱いて眠る渚くんの顔があった

朝日を受けた黒髪を光らせ、長い睫毛を伏せてまだ眠る彼に目を奪われながらも

鳴り続ける電話の着信を告げるべく彼の肩を揺すった


「渚くん…」

「ん…」


肩についた新しい爪痕

触れてしまったのか、眉を寄せながら掠れた声をあげる彼


「ねぇ、電話…鳴ってるよ」

「…千隼」


彼はアタシを抱き寄せ髪に顔を埋めるも、起きる気配はなさそうで


「ねぇって…」

「…ほっとけよ、こんな朝から…どうせろくな電話じゃない」


そんな声はするけれど睫毛は伏せられたまま

それでも鳴りやまない電子音にソワソワしだすアタシは彼の腕を抜け出した


「起きようよ…電話鳴ってるし」

「無理…」

「お腹すいた…」

「…タルト食え」

「あ…」


横になったまま、ようやく目を開けた渚くんが、カラダを起こしてソワソワしているアタシを見て微笑む

目が合って、その柔らかい微笑みに胸がトクンと音をたてて熱くなる頬


「顔真っ赤にしてないで、先に行けよ…聖に食われるぞ」

「っ………!!」


こ、困る…!!

タルト食べられちゃうのも、こんな顔してる自分もなんか色々困るよ

それに、いつもクールなくせに急にそんな甘い顔されても、心臓がついていけないって言ってるから…

困るからね……!!


渚くんの鼻で笑う声を背に、アタシは赤い顔を隠すように急いで部屋を飛び出す





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