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ネムリヒメ.
第16章 散らばるカケラ.
『…どうしてですかっ』
『…………』
『っ…紫堂さん!!』
聞こえてくるのは明らかに涙混じりの女性のわめき声
「うっわ、昼間から修羅場かな♪」
「え…あっ、ちょっと…」
聖くんはニヤリと妖しく口元を歪めると楽しそうにアタシの手を引く
「ダメだって」
「えー、なんか面白そう♪」
アタシの制止にも構わず手を引く聖くんに、だんだんと部屋の奥の会話が近くなる
そしてとうとう、部屋の奥にあるデスクの脇で着衣を乱した女性が、男性に泣きながらすがり付いている姿が目に飛び込んできた
う…そ…!!
これってヤバくない!?
そう思って慌てて隣にいる聖くんを伺うけれど、彼は楽しそうにそれを眺めている
すると…
『……黙れ』
そんな声低いが張りつめた部屋空気を震わせた
あ…れ…
今の声って…
なぜか聞き覚えのあるその声に心臓が変な音をたてる
そして
「ちょっとー、来客なんですけどー」
『…っ…………!!』
突拍子もなくそう投げかけた聖くんの声に部屋の奥にいた男性がゆっくりと振り替えった
っ………
え…………
「……………!!」
言葉がでなかった
だって…
目の前にいる人をアタシは知ってるから…
光沢のある黒のシャドウストライプの細身のスーツ
深いワインレッドのシャツに合わせられた白ネクタイ
揺れる黒髪に少し長めの襟足…
今朝、同じ人物をアタシは見送っているんだもの
…渚……くん!?