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ネムリヒメ.
第16章 散らばるカケラ.
目の前にいたのは確かに渚くんだった
彼を前にいろいろな"どうして?"が頭のなかでぐるぐると渦を巻く
アタシ…もしかして、見ちゃいけないものを見てる!?
頭ではそう思うのに
首に巻かれたスカーフは乱れ、はだけたブラウスからは下着が見えるほど胸元が露になっている…
そんな格好で彼の胸元にしがみついたまま泣いている女性の姿から目が離せなかった
「…………っ」
もちろん事情なんてわからないけれど、彼女の格好が妙な想像をかきたてる
それがさっきから変な音をたて続けている鼓動を、さらに大きくしているのは確かだった
一瞬、渚くんと目が合った
しかし彼はアタシからすぐに目線を外すと、チラッと聖くんの姿を確認する
そして彼はアタシたちにはなにも言わず、泣きすがる彼女を無理矢理引き剥がすと鋭い視線を向けた
「来客だ、下がれ…」
「でもっ…」
引き下がらない彼女の言葉を渚くんの威圧的なオーラが遮る
「…出ていけ」
「…っ!!」
彼女は渚くんの刺すような視線と冷たく言い放った低い声にビクリと肩を強ばらせた
そして震える手で床に落ちているジャケットを拾い上げると、開いた胸元に押し付け、駆けるように社長室を出ていく
彼女とすれ違った瞬間、ふわりとタバコとムスクの混じった香りが鼻をついた