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ネムリヒメ.
第16章  散らばるカケラ.




「おいおいおい、なんて顔してんだよ」

「っ……」

「千隼っ」

「う……るさい」


挙げ句の果てには、こんな時に素直になれない自分が悲しくなる

これじゃまるで子供だ


それから再び渚くんに名前を呼ばれてようやく、伏せてしまっていた視線を戻すと いつもと変わらない冷静でクールな彼がいた


なんでそんなに落ち着いてるの?

少しは焦って言い訳してよ


…自分は良くて、渚くんはダメ

ワガママで自分勝手な矛盾は承知のうえだ

けれど、

葵くんから奪うようにアタシを抱いたくせに…
今朝の胸を貫くようなあの言葉も…
瞳を奪ったあの表情も…

なのに…

誰?
どうして?

一度沈んでしまった気持ちの負の連鎖は続いてしまう

こんな時にまで落ち着いている彼に、こんなにモヤモヤした気持ちになっている自分が惨めにさえ感じた


「もう、ちーちゃん泣きそうじゃん。こんな顔させたの渚くんだからね!! 口尖ってるじゃん、可愛いけど」


あ…

自分がどんな表情をしているかさえもわからない状態だった

すると横から聖くんがそんなアタシの唇を摘まむ


「んーん、んー…!!」


聖くん!?

って…しゃ、喋れないから!!


「あははっ♪かーわいっ」

「んっ、んー!!」


ちょっと…!!聖くんまで…




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