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ネムリヒメ.
第18章  不機嫌な Navy Blue.



─それから1時間後…


雅は海風に吹かれていた


…と言っても東京湾に沈められた訳ではなく、ホテルのプールサイドで風にあたっている

肌を撫でる少し冷たい風がさっきまで頭に血がのぼっていた自分にはとても心地いい

身の安全は確保できた

ビーチチェアに寝転がり夜空を仰ぎながら、気持ちを落ち着かせるように大きく息を吐き出す

しかし、それは大きな溜め息となって夜の空気に溶けていった


雅の溜め息の理由…

それは身の安全の代わりに、気分を真っ暗な海のどん底まで沈められていたからだった


「…くしゅんっ!」


隣でした小さなくしゃみに瞑っていた目を開ける

横になったままチラリと伺えば、冷たい風に身をさらわれ僅かに身を震わせる小さな影


はぁ…

雅は再び溜め息をつくとビーチチェアからカラダを起こす


「おい、寒ぃなら言えよ」

「ッ…!!」


雅の声に小さなカラダがピクリと跳び跳ねる


「ゴメンなさっ…」


そんなか細い声に、雅の脳裏に浮かぶのは部屋を出る前の聖の声で…


"泣かすな、怯えさせるな、ちゃんとエスコートしてあげて…さもなくば…"


「…………っ…」


"…オレがお前を東京湾に沈める"


過る聖の顔に背中がゾクリとする


ッ…なんでオレが……


そう思いつつビーチチェアから腰を上げた雅は、渋々自分のジャケットを脱ぐと目の前で震える細い肩にそれを落とした



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