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ネムリヒメ.
第18章  不機嫌な Navy Blue.



「ねぇ、雅…お前、自分もなにも覚えてないの、忘れたわけじゃないよね…」

「………!!」

「思い出さなきゃいけないのは彼女だけじゃないの。…わかるでしょ」


聖の静かな脅しに雅は無意識に止めていた息を吐き出した


「………わかったよ」

「そ!?あはっ、いい子♪」

「あ゛!?」


自分の返事にケロリと表情を変えた聖に苛立つ雅


しかし、


「さっきの忘れないでね」

「っ……!?」


「あはっ♪…呉々も泣かすようなまねしないで」


再びギラッと鈍く光る栗色の瞳にハッとする


「さもなくば…

オレがお前を東京湾に沈めるから」


「──────!!」



………………



どいつもこいつも結局なんなんだ…


ライトアップされたプールの水面に視線を落としていると


「…ありがとう」


自分を見上げて呟く小さな声に雅は我に返った

視線を上に戻せば、自分のジャケットを肩に羽織って控えめに見上げる千隼の姿がある


「……ちゃんと言えよな」

「っ!?」

「寒ぃなら」

「あ…うん」


自分の声にピクリと彼女の肩が上がる


"怯えさせるな…"


「……………」


そんな聖の言葉だったが


…ムリじゃね!?

こいつとまともに話したことねぇし、そもそもあの日から……

つーか、その前に女嫌いのオレに押し付けんな!!


雅のそんな胸のうちとは関係なく、再び小さなくしゃみが耳を掠める


「っ…ごめ…」

「いちいち謝んなよ…」


雅の溜め息が夜空に消える


それから雅は少しためらうと


「……行くぞ」


夜風に冷えた千隼の手をそっととった




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