この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
ネムリヒメ.
第19章 記憶の中の摩天楼.
それから………
「なんだかオレ、超複雑…」
食事をしながらお酒を煽るみんなから離れたドレッサーの前で、ヘアメイクアーティストの顔になった葵くんがアタシの髪に手をかけていた
彼はアタシの髪をまとめると、ドレスの首まわりと肩のフレンチスリーブの袖口からはみ出して目立つキスマークと噛み痕を確認していく
そして、コンシーラーとファンデーションを手に取ると肌に馴染ませながら大きなため息をついた
「これ、オレんじゃない…」
「…………」
"葵…ごちゃごちゃ言ってないでお前はこれを消せ"
渚くんとのバチバチを遮るようにアタシの袖口をめくった雅くんに高圧的に言われた葵くんは、
拗ねた口調ながらも手際よく半端ない主張をする紅い跡を隠していく
「っていうか、これちょっと拷問なんだけど…」
「う……うん」
「オレならこんなとこにつけないのに…」
「…………っ」
確かに、葵くんの優しさなのか目立つところには絶対に跡つけたりしないんだよね
…っていっても、彼は太ももの内側とかにつけるからそれはそれでとっても厄介なんだけど
普段あまり目にしない真剣な顔をしながら手を動かす彼に僅かに赤くなった頬が、さらっと言われたそんな言葉にさらに熱を持った
「まっ、こんなもんかなぁ…」
「ん、ありがと」
あ……すごい
綺麗にカバーしてくれた首まわりと肩を映してくれながら、ドレッサーの鏡のなかで葵くんが微笑む