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ネムリヒメ.
第19章 記憶の中の摩天楼.
葵くんにすっかり落とされてしまったルージュとグロスを直してもらってリビングに戻ると、葵くんが真っ先に雅くんに声をかけた
「みっくーん、見て」
「……あ!?」
明るい葵くんの声に、ソファーを占領して寛ぐ雅くんが煩わしそうに返事を返す
「ちーちゃん、できたよ」
「あっそ…」
だからなに!?
と全身で語る雅くんに葵くんは、これでいいんでしょ♪ と彼の前にアタシの背中を押した
しかしトマトを綺麗によけたサラダのディッシュボールを手にする彼は
「……………」
ここにきて無視なのか…
顔をあげてはくれなかった
「ちょっと!! みっくんが見立てたんだから最後までちゃんと見てあげてよ」
「……………」
っ……
別に褒めて欲しいだなんて思わないし、無視なんて覚悟のうえだったけど
"これなら誰の隣にいてもくすまねぇだろ"
そう言ってせっかく見立ててくれた彼に、せめて少しでいいから見てほしいという気持ちがどこかにあったみたいで、胸がツキンとして視線が落ちる
「みっくんってば」
「っ、しつけぇ……!!」
そして、葵くんの更なる呼び掛けに痺れを切らせ不機嫌に顔をあげた雅くんは
え…
「…………っ!!!」
瞬間、喉元に突き付けられたフォークが放つ鈍い閃光に、一瞬にして顔を強ばらせ即座に凍りついた
「…泣かすなっつてんだろうが、ど阿呆」
「……………!!」