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ネムリヒメ.
第19章 記憶の中の摩天楼.
「これ…オレが脱がすまで、誰にも脱がされんなよ…」
「ん…」
ゾクリとする程の耳元で囁かれた甘い声に、あっという間に沈んだ胸の内を支配され、一気に上気する頬
目の前の夜景が霞むほどの渚くんの色気に目が眩んで頭がくらくらする
慣れることのない彼の濃艶な空気はいつも毒だ
その毒にいつもすぐに侵されるアタシは、未だ免疫を持つことを許されないままでいた
「…返事は?」
「っ……ん、……ぁ」
低く甘い声が頭のなかに響く
甘い吐息にピクリと肩が揺れて、思わず漏らした吐息は引き直したルージュと一緒に渚くんの唇に絡めとられてしまった
「千隼…」
「…ん……っ…」
唇の隙間から名前を呼ばれて胸が鳴る
それに
酸欠なのか、それとも熱のこもった口づけに酔わされたのか
ヤバい…なんかクラクラする
「エロッ…」
彼は虚ろな表情でくったりと力が抜けたアタシに満足そうに微笑むと、耳元に軽く音をたててキスを落としてから席をたった
そして、オードブルを取ると、手にしたグラスに淡いピンク色のシャンパンを注いでくれる
彼はそんな仕草ひとつにしても、綺麗でどこか艶っぽかった
自分を包み込んでいる非日常感がそう見せるのか、それとも渚くんが我が物にしているこの空間が彼の魅力を際立たせているのか…
宝石のように散りばめられたきらびやかな夜景を背にしても霞まないオトコ
アタシはいつもより魅力的に見える彼に目を奪われながら、差し出されたシャンパンを受け取った