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ネムリヒメ.
第19章  記憶の中の摩天楼.





彼とグラスを合わせると軽やかな音が小さく響いた

キラキラと泡を弾くシャンパンを口へ運ぶ


…あの日もこんなだったのかな


自然と考えてしまう記憶のないあの日のコト


「ねぇ、渚くん」

「ん…?」

「あの日もこんなだった?」

「こんなって!?」


彼はグラスをいったんテーブルへ置くと窓の外を見ながら口を開くアタシに首を傾げる


「…アタシと渚くん」


アタシがそう返すと彼は、あぁ…と軽く笑う


「だいぶ違う…」

「……!?」


え……

そんな返事に驚くアタシを彼はさらに笑った


「お前、オレの前でこんな大人しくなかったし…」

「あ…うん」


さんざん我が儘放題で困らせたんだっけ…

そうは聞いていたものの、自分の醜態をある程度覚悟して、彼に訪ねてみる


「あの、詳しく…教えて」

「いいけど…引くなよ」


引く程なのか…アタシ


「とにかく手に負えねぇ程の我が儘っぷり」

「それは聞いたよ…知りたいのはもっと中身」


すると彼は、まぁ食べなさい…とオードブルのお皿をアタシにくれた


「あーそう!? じゃあ…まずお前の育ちを疑ったくだりからな」


は……!?

すると渚くんは再び手にしたグラスを目の前にかざしてフッと思い出したように笑う


「今飲んでるこのシャンパン、なんだかわかるか?」

「あ、うん。もちろん」


彼がさっきグラスに注いでくれたのは、鮮やかなピンク色のドンペリだ

いわゆる"ピンドン"と呼ばれる、"ドン ペリニヨン ロゼ ヴィンテージ"



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