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ネムリヒメ.
第20章 白と黒の影.
しかし、渚だってただモテてきたわけではないのだ
「あんな素敵な方、悲しませるものではありませんよ…失礼」
この手のオンナは長くなると厄介だ…
そう悟ると、自分の手を握る彼女の手を膝の上に返し、サラッと微笑みを流して席をたった
すると
「っ…私よりあんな小娘がよくて!?」
「は………」
背中に投げ掛けられるそんな言葉
少々怒気を含んだ声色に振り返れば、さっきまで爛々とさせていた目を細めた彼女が渚を睨むように見上げていた
「貴方、失礼ね。この私に恥をかかせる気!?」
「……………」
どっちがだよ…
内心でそう呟くも渚は艶やかに微笑んだまま表情を崩さなかった
そんな態度が彼女の神経を逆撫でる
「今夜のお相手はあの小娘なのかしら、遊びにしても趣味がいいとは言えないわね…
残念だわ、貴方のように素敵な男性には私のような女がふさわしいのにわからないなんて…」
「……………」
自分を棚にあげ大胆にも迫ったくせに、相手にされなかったのがよっぽど悔しかったのだろうか
「悔しかったら黙ってないでなんとか言ったらどうなの…聞いてさしあげるわ」
黙ったままの渚にここぞと言いたい言葉を浴びせる彼女
しかし…
「…つまんねぇオンナ」
「え…」
突然返された渚の言葉と、さっきまでの紳士的な笑顔からは想像のできない射抜くような冷たく鋭い視線に、彼女は言葉を失っていた