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ネムリヒメ.
第20章  白と黒の影.




……………



「きゃっ…」


ドンッ…


乱暴にぶつかった冷たい壁の感触に腕と背中に鈍い痛みが走る

ったぁ……


なにかにぶつかった!?

それとも押された!?

とにかくその衝撃ではね飛ばされ壁に押し付けられたアタシのカラダは、しばらく動くことはできずそのまま崩れ落ちそうになっていた


が、


「っ…!! すまない」

「………!?」


え……


そんな声とともにカラダに添えられる腕

咄嗟に支えられ反射的に瞑っていた目を開くと、ブラックスーツの男性が心配そうに顔を覗きこんでいた


全身オールブラックで揃えられた身なりに、前髪を長く残したショートミディアムのスモーキーアッシュ

ツイストを加えたMIXパーマがあてられている髪からは甘いマスクが覗いていた

仄かに香るローズの香りがなんだか印象的で、アタシはその人を思わずガン見してしまう


「ケガはしてない?」

「…おそ…らく」


背中と肩をパンパンと手で払い、立たせてくれるハスキーボイス

自分よりもひと回りくらい歳上に見える彼に首を縦に振る


「申し訳なかったね…」

「いえ、こちらこ……!!」


なぜかここで途切れたアタシの言葉


「…………!?」


あれ、もういない!?


きょろきょろと辺りを見回してみるけれど、その後ろ姿さえ見つけることはもうできず…


「は…はやっ」


いや、アタシが鈍ってるのか

じゃあ、やっぱり酔ったんだね





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