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ネムリヒメ.
第20章  白と黒の影.




正しくは酔わされた

渚くんそのものに…

って


っ────!!!


そう思ったらまた耳に火が着いたかのように熱くなって、顔に熱がこもる

これじゃせっかくクールダウンしたのに意味がないじゃない


「はぁ…戻ったらひとこと文句言ってやるんだから…」


ボソッと呟きながら彼の待つロビーへと戻ろうとする


が…


「っ……………!!?」


エレベーターホールを通りかかった時だった


急に後ろ手を引かれ、強い力で引っ張られるアタシ

今度はなにっ!?

突然のことで頭がついていかない状態のまま、エレベーターのなかへと引っ張り込まれる

息をする間もなくエレベーターの扉が閉まる光景がモノクロームのように瞳に映る

襲いくる不安にドクリと心臓が嫌な音をたてた


ところが、


「遅ぇよ…」


「っ…!!」


あ……


聞き慣れた声に後ろからきつく抱き締められ、よく知る香りが鼻を掠めると一気にカラダの強ばりが解けていく


「はぁ……渚くん!? もう、ビックリするじゃ…」


後ろから回された覚えのあるスーツの袖に手を添え、彼を見上げるように振り返ろうとする


が、


「ん…」


有無を言わさず首筋に顔を埋めてきた彼によってそれは遮られた


「お前、どんだけ鏡と睨めっこしてたんだよ…」


低められた声と、まるでアタシの存在を確かめるかのようにカラダを密着させられ胸がざわつく

筋の通った鼻で髪を掻き分けるように顔を摩り寄せた彼は、アタシの匂いを懐かしむように大きく息を吸い込んだ




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