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第20章 　白と黒の影.

そんな渚は、千隼を腕に閉じ込めたまま先程のロビーでのやり取りを思い出していた


「どうです今夜…貴方のパートナーと私のパートナー…

ﾌﾌｯ、彼女も充分にいいオンナでしょう」


そう自分に耳打ちしてきたあのオトコ


「は……」


鋭い渚はその先の言葉を聞かずとも、男の言わんとしていることは容易く察しがついた

しかし、


「…仰る意味が」


笑わない瞳を携え、微笑むように口元を歪め男にそう返す

すると、男はソファーに座る連れの女性から少し離れるように渚の腕を引くとクスリと喉を鳴らした


「貴方が今日連れているご令嬢…先日のパーティーでご一緒だった方でしょう。…実に素敵な方だ」

「…………」

「もちろん、ただでとは言わないさ…

ぜひ一晩、お付き合い頂きたいたいね。いい声で鳴きそうだ」

「っ…!!」


そこまではっきり言われれば、さすがの渚の顔もひきつるわけで


─あのオンナに加えてこのオトコもかよ、バカは一人で充分だ…


刃物のように鋭い視線で男を捉え、言葉の槍を突き刺そうと


「ﾌﾝｯ…片桐さん、冗談は休み休み…」


…言った方がいい


明らかに怒気を含んだ声を投げ掛ける

ところが、


「…なーんて、いつもなら言うところなんだがね」

「は…」


再び人の良さそうな姿に表情を一変させて微笑む男の言葉が渚の言葉を遮った

軽く沸騰しかけた渚だが、すまないと頬を緩める男に表情を強張らせたままフリーズする