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ネムリヒメ.
第20章 白と黒の影.
そして別世界に飛んでいった男と、渚にビビったままで顔をひきつらせている連れの女性を見送るため、渚はエレベーターホールまで付き添った
「では、片桐さん…素敵な夜を……」
すっかりくたくたになった渚は最後の力を振り絞って男に笑顔を向ける
…と、ここで連れの女性が何を勘違いしたのかくたびれる渚を見て、してやった感満載の表情を向けてきたので
渚は自分を散々翻弄した男の分と合わせてのこのオンナに制裁を加えることにする
「あぁ…お連れ様」
彼女にしか聞こえない声で呼び止めた渚は、男の隙を伺って耳元に顔を寄せた
「お前は他のオトコに尻尾を振らないように、そいつにしっかりと躾てもらうといい…」
「っ……!!」
突然、渚の痺れるような甘く低い声に鼓膜を揺らされ、ビクリと肩をあげた彼女は腰を砕きそうになる
「…お前にオレはもったいねぇよ」
そして、ゾクリとするほどの熱い吐息混じりのとどめの一言
顔を真っ赤にしてその場に崩れ落ちる彼女の姿に、渚は酷薄な笑みを添えたのだった
………って、そんないきさつはどうでもいいんだっつーの
考えるだけでストレスがたまるような出来事を払拭するように、渚は千隼を抱く腕に力を込めた
彼女の放つ柔らかく甘い香りで必死に脳内を満たそうとする
「渚くん、なんか疲れてる!?」
「…………ん、待ち疲れた」
「っ、ゴメン」
「………ダメ」
「…………」