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ネムリヒメ.
第21章 あの夜の王子様.
「ッ…みや…び…くん…」
戸惑いと混乱のなか、彼の正気を確かめるように唇の隙間から溢した声は僅かに震えていた
なん…で…
雅くんの熱に翻弄されながらも、必死に答えを求めようとする
しかし、激しいキスに頭の芯が溶けそうに熱くなるばかりだった
吐息を絡めとられる度に乱されていく服
"これ…オレが脱がすまで、誰にも脱がされんなよ…"
雅くんに追い詰められた状態で、頭を過るのは渚くんのあの言葉
優しくて甘い彼の囁きが、ごちゃごちゃになった脳内にリフレインする
…渚…くん…
しかし、どんなに彼を思い浮かべたところで、今ここにその姿はなかった
渚くんだけじゃなくて、葵くんも、聖くんも…
そう…つまり
この密室の空間には、雅くんとアタシだけ…
濡れた唇と聞いたことも見たことのない声と表情でアタシを食らい尽くそうとする
雅くんと
ふたりだけだった
……………
「……なんで誰もいねぇの」
事の始まりはそんな渚くんのひとことからだった
重厚な造りの扉を開け、カツンと部屋に足を踏み入れた渚くんが呆れた調子でそう呟いた
このカジノホテルオーナーである彼直々にエスコートされてやってきたカジノ最上階のVIP専用のハイリミットエリア
きらびやかな一般のカジノフロアとは違う高貴な雰囲気を漂わせるそこは、まるで映画の世界に迷い混んだような錯覚を覚えさせる